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榎並 和春 -Kazuharu Enami-
 
 
 
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​「私はわたし」/ ドローイング

 

Web Gallery 常設展示室 にて作品取り扱い中

 100年以上の時を渡る作品とはどんなものなのか。この問いは自分の中でしばしば発生します。戦争や天災など生命を脅かす危機が何度も発生してきた歴史の中で、食物にも薬にもならないけれど何世代にも渡って後世に預けられてきた美術作品は多く、そうやって生き残ってきた作品はその何倍もの数に及ぶであろうそうではなかった作品と何が違ったのか…時折そんなことを考えます。

いくら強靭にモノを作り上げたとしても金づちで叩けばあっけなく壊れてしまう美術作品は今も昔も多いでしょう。そういった作品が幾度も危機を乗り越えられた理由のひとつに積極的に保護されてきたというケースはあると思います。作者名に価値がつく著名な画家の作品などは保護する理由も明白で、積極的に保管されてきたと言えるかもしれません。ですが作者名や制作時代など作品にまつわる情報がほぼ不明でも永らく残ってきたものが多いこともまた事実です。そういった作品が綺麗な姿で今でも在り続けることが出来たのは何故なのでしょうか。

 話が飛ぶようですが、2017年に私が初めて榎並和春さんの作品を拝見した時、その作品力が本当に衝撃でした。漠然と「本物」に触れたという感覚を覚えたのと同時に「美術館でなくてもこのレベルの作品を見ることができるし買うこともできる」という事にも驚きました。その時点で榎並さんのことは何も知らなかったのですが、作品そのものが持つ「存在力」とも呼べそうな力強くも美しい気配にひたすら圧倒され、むしろ作家名を始めとする作品に関する様々な情報は気にもなりませんでした。あの時の経験を振り返って今思うのは、末永く残っていく作品とはそういう作品ではないかということです。付随する情報を理由に保護される作品は、時代が変わりその情報の価値も変わってしまえば簡単に捨てられるでしょう。ですがモノそのものに人を納得させる力がある作品は、生みの親である作者からも独立し、その強固な存在力によって一人で渡っていくのかもしれません。そういう作品は保護されるとは限りませんが、積極的に破壊してしまうことを人に躊躇わせる何かがある気がします。時代が移ろい人々の価値観が変わっても、それを凌駕する美しく揺るぎない存在力を放つ作品は確かにあって、それは作り手から魂を宿された作品と言っても過言ではない気がします。そんな視点から現代美術を見つめ、改めて榎並さんの作品を見直す時、澄み渡る真っ白い真実のようなものに触れるような、そんな感覚になります。

(2023年4月 飯田未来子)

 
 
 

榎並 和春 -Kazuharu Enami-

 

【略歴】

1952年   兵庫県生まれ

1981年   山梨大学教育学部美術科卒業

1983年   第1回個展 (86第2回)   (山梨県民会館)

1986年   山梨県芸術祭展ー芸術祭賞受賞 山梨県所蔵

1987年   東京セントラル美術館大賞展ー入選 同’89 ‘93

1988年   第3回個展 (89第4回、90題5回) (銀座・中央画廊)

1990年   国画会展ー初出品 以降毎年出品 (東京都美術館)

       第6回個展、91第7回、92第10回、93第11回 (甲府・おおくぼ)

1991年   第8回個展 (銀座・スルガ台画廊)

1992年   第9回個展 (銀座・銀屋画廊)

       第一回小磯良平大賞展ー入選 (神戸・小磯記念館)

       JAPAN大賞展ー佳作賞受賞 (銀座・洋協ホール)

       第五回山梨県新人選抜展ー山梨県立美術館賞受賞作品収蔵

1993年   第67回国画会展ー新人賞受賞 (東京都美術館)

       印象神戸展ー大賞受賞 (神戸市立博物館)神戸市所蔵

      第12回個展 (銀座・スルガ台画廊)

1994年   昭和会展招待 同’95  (銀座・日動画廊)

       上野の森美術館大賞展ー賞候補 (上野の森美術館)

       第13回個展 (甲府・Gallery Win)

       第14回個展 (銀座・中央画廊)

1995年   大木記念財団海外研修奨励金を得てイタリアで一年間研修

       第15回個展ナルニ市共催 (ナルニ市民劇場) 作品寄贈

1996年   第70回国画会展ー奨励賞受賞 (東京都美術館)

       第16回個展「ナルニの街かど」 (甲府・三彩洞)

 

1997年以降 個展で発表。2021年現在で個展回数は105回となる。

【主な個展開催画廊】

海文堂(神戸)/ ハーバーズ・ミル(甲府)/ 惣(銀座)/ ルポール(神戸)/ 阪急梅田本店/ 銀座松屋/ イノセント(甲府)/

山口画廊(千葉)/ 光画廊(銀座)/ SHIMA(西宮)/ 洛(京都)/ シャギーD・G(町田)/ 企画画廊くじらのほね(千葉)

 

【パブリックコレクション】

山梨県立美術館/ 山梨県立大学/ 山梨英和大学/ 山梨県文化課/ 神戸市文化課/ イタリア・ナルニ市役所

 
 
 
© 企画画廊くじらのほね
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