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青木 香織 -Kaori Aoki-

かげおくり
パネル、綿布、岩絵具、木炭、箔
2020年 / 180×140mm
私は、人間の心の中にある想いや「心情」が
うつろいゆく姿に心惹かれる。
ひとひらの雲のように刻々とうつろい、
姿を変えてゆく人間の心情は、
まるでひとつの生命体のようだ。
この視覚で捉えることのできない心情を
「少女」という人物像を通して
描きとめたく、制作を続けてきた。
私は、単に少女の姿を描きたいのではない。
描きたいのは、
明確な形にも色にも言葉にもならないもの。
直接視覚で捉えることのできない、
人間のうつろいゆく心情の姿である。
描かれている少女は、
心情を託すための存在であり、
鑑賞者に享受してもらうための入り口となる。
描かれた画面上に、我々が生きている
「この世」の一部が あるように見え、
そこから垣間見える生命感こそ、
絵画のもつ魅力ともいえるのではないだろうか。
(文:青木香織)
青木さんと言えば人物画を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし独特な表情や雰囲気を纏う人物たちを、私たちのイメージする一般的な「人物画」で括ろうとすると何か腑に落ちない、そんな不思議な感覚を覚える人も少なくないのではないでしょうか。
画面に向き合う時、あるいは絵具を筆で滑らせる時、作家はそこに自分の表現を乗せていきますが、青木さんにとってそれは「描く」行為であると同時に「模索」という作業でもあると思うのです。描きながら、時に筆を置いて休みながら、画面に何かが浮かび上がるのを待つ。それを繰り返しながら、浮かんできた姿に命を吹き込んでいく...最近の青木さんの作品を見るとそんな工程が想像できます。
かねてより青木さんが描くモチーフは「人間のうつろいゆく心情」というものがキーワードになっています。時に激しく、時に穏やかに、まるで大海のように常に揺れ動きせめぎ合う人間の心情には形がありません。そんな目に見える形が無いものに「人物」という形を与えて絵画の中で可視化していく、青木さんの人物画にはそんな前提あがります。 目に見えないものや形のないものを、我々は普段認識する機会を中々得られませんが、青木さんの作品を見ることによってそういったもの達も確かに存在しているということを改めて思い出させられる気がします。
今回は人物画の他に抽象画や立体なども展示させていただく運びとなりました。今までの青木さんのイメージとはまた違う作品かもしれませんが、根幹は人物画と同じです。青木さんにとって物事の存在は形があるか無いかはさほど重要ではないのだと思います。
「目に見えなくとも、確かに存在するもの」 そういうもの達の小さな声に耳を澄まし、受け入れ、その美しさを描いていく。何かが煌めいた瞬間が確かに存在した証としての作品たちを、ぜひご高覧ください。
(2020年 個展「かげおくり」によせて)














青木香織 -Kaori Aoki-
【経歴】
1995年
福井県にて生まれる
2018年
嵯峨美術大学(旧:京都嵯峨美術大学)芸術学部 卒業
2018年
嵯峨美術大学 大学院 芸術研究科 芸術専攻 造形絵画 入学
2020年
嵯峨美術大学 大学院 卒業
【受賞歴】
2017年
第1回 京都学生アートオークション(京都芸術センター/京都)【入選・落札】
2018年
第46回 嵯峨美術大学 卒業制作展(嵯峨美術大学/京都)【大学賞・卒業生特別賞】
2019年
「京都 日本画新展 2019」(美術館「えき」KYOTO・ホテルグランヴィア京都/京都)【入選】
第37回 上野の森美術館大賞展(上野の森美術館/東京)【入賞】
2020年
「京都 日本画新展 2020」(美術館「えき」KYOTO・ホテルグランヴィア京都/京都)【入選】
第48回 嵯峨美術大学卒業制作展(嵯峨美術大学/京都)【卒業生特別賞】