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伊山 桂 -Kei Iyama-
 
 
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​「風の川舟が流れている」/F6

 

 今年4月の某日、私は岩手県盛岡市で一人の作家の個展を拝見していました。車で片道7時間かかった上、日帰りで帰らねばならない過酷なスケジュールという、誰が見ても無茶な弾丸旅行だったのですが、展示を拝見した瞬間、無茶をしてでも来て良かったという気持ちだけが残りました。作家の名前は伊山桂さん。兼ねてより原画を拝見したいと思い続けていた2001年生まれの若い作家です。
 盛岡市の個展では自作の顔料を使用したミクストメディア作品を中心に、様々な作品を拝見させていただきました。もともとミクストメディアの作品から伊山さんのことは知ったのでその原画を拝見するのが目当てだったのですが、それとは別に一点気になる作品がありました。それは展覧会の中でも大きめの作品で、絵の具と鉛筆によってややラフな風に描かれたものだったのですが、その画面の中に引かれた鉛筆の線の美しさを見たとき、言葉にならない驚きと心音が高鳴るような感覚とが入り混じり、何かとてつもなくすごいものに触れたような気持ちになりました。
 その後ギャラリーのオーナーさんや伊山さんご本人から色々とお話を伺う中で、伊山さんは岩手県立美術館と同い年であること、小さな頃から毎日のようにそこへ通っていたこと、その中で舟越保武さんや松本竣介さんなど巨匠と呼ばれる方々の作品を見続けてきたことなどを教えていただきました。そのお話を聞いた上で改めて作品を見た時に「巨人の肩の上に立つ」という言葉を思い出しました。先人の発見や偉業にもとづいて仕事成すことで新たな発見に繋がることを指す言葉で、主に科学の進歩などの例えに使われることが多い言葉ですが、伊山さんの作品に宿る「美」を見ているとまさに先人の画家が成し遂げてきた偉業を見つめ続け、その作品に現れる「美」を受け取り続けてきたのだろう、そしてそこから伊山さんならではの価値観と感性に基づいて新たな「美」をここに生み出しているのだろうと思いました。
 伊山さんの制作は「作品を作ること」を目的とするのではなく「描く」という行為を通して自然と人との関係性を模索することに重きを置き、その中で出来上がる作品とは思考実践の痕跡の様なものだそうです。その在り様は「美術のための美術作品」で溢れる現代アートのトレンドとは全く別方向を向き、徹して「自分のための美術」を貫いているかの様です。その姿勢を見ていると「特別で崇高なもの」というどこか空虚な位置に置かれてしまった美術を「人間のもの」として取り戻していくようで、何か大切なことを思い出すような気持ちになります。

​(2022年伊山桂展「伸びる真空管」によせて)

伊山 桂 -Iyama Kei-

 

 2001年岩手県盛岡市生まれ。 
 自然と人の関係性を考えることをテーマに美術実践を行っている。
 人間の持つ「美術」「絵を描く」といった行為や起源に注目し、フランス「ラスコー洞窟」「アルタミラ洞窟」など現在最古の描写痕にインスピレーションを受けたcaveシリーズと呼ぶ平面作品を制作。この制作では実際に河川などから調達した小石から自然顔料を作るなど、描写に至るまでの間とプロセスを重要としている。
 また、こうした実践的なプロセスは思考のために繰り返す必要があるとし連続した作品制作を行っている。
 活動はこのように反復、往復を基本としているが、結果それらが徐々に重なり合わずぶれていくところに自然な人間性、野獣性を見出している。

【展示経歴】
2020年 個展「RELATIONSHIPs」彩画堂S-SPACE /盛岡
      グループ展 「la eclosion」ギャラリーAN /水沢
          企画グループ展 「Cyg SELECT  2020」Cyg art gallery

2021年 個展「伊山桂個展 太陽の正位置」implexus art gallery /盛岡
          グループ展「プリン同盟20周年記念展」石神の丘美術館/岩手町
          屋外展示「Art Field Iwate 2021」盛岡市中央公園/盛岡
          企画グループ展「Cygnus parade」Cyg art gallery /盛岡

2022年 企画グループ展「 Future Artist Tokyo:SHIP」東京国際フォーラム/東京
      個展「伊山桂個展 遠景のドキュメント」implexus art gallery /盛岡
      グループ展「うたの心 −絵筆に託す−展」東京九段耀画廊/東京

【受賞】 
2021年 公募展「第7回 F0公募展ミニアチュールzero 2021」大賞
2022年 公募展「第8回 F0公募展ミニアチュールzero 2022」マルマン賞

 
 
© 企画画廊くじらのほね
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