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作田 富幸 -Tomiyuki Sakuta-
 
 
 
 
crying in the dark-part-hand coloring.jp

​「Crying in the dark -part- hand coloring」

 
 
 
 

「泣く」という行動は非日常であり何だか一大事なことのように思うかもしれません。ですが私たちは皆この世に生まれ落ちた瞬間は泣くことで始まり、その後も赤子のうちはしばらく泣くという行動が当たり前で、逆にそれしか出来ない日々を送っていました。歳を重ね、言葉を得て、自分の思うことを表現する手法が増える度にいつの間にか私たちは泣くことを日常から手放していきます。そういう中で大人になった今「泣く」とはどういうことなのか。悲しいとき、寂しいとき、嬉しいとき、感動したとき…プラス的にしろマイナス的にしろ涙は感情が強く揺さぶられた時に出てくるように思います。

 赤子が泣くというのと大人が泣くというのはそもそもの目的が違う気がします。赤子があれだけ大きな声で泣き叫ぶのは誰かに気づいてもらいたいというのが強く、赤子の泣く行動は他者に向けてという要因が大きいと思うのです。一方で言葉を取得し他人に何かを伝える上で泣き叫ぶよりももっとわかりやすい表現手法を持つ大人が泣くとはどういうことなのか。止めたくても止まらない、どうしようもなく涙が溢れるという困った経験をしたことがある人は私だけではないと思います。あの時の「泣く」という行動は他者に向けてではなく自分に向けての行動だと思うのです。それは自分の心の奥底から自分自身に向けての、言葉にならないどうしようもない叫びなのかもしれません。

 作田さんの作品は一見すると怖かったり不気味だったりするかもしれません。ですが原画と対峙するとホラー映画のようなじとっとした湿度感はそこに無く、むしろカラッとした乾きのようなものがそこにあるように私は感じます。そして涙を流している作品が多いようにも思えます。奇怪な姿形に描かれた者たちも顔を歪ませわんわん泣いている、そんな不思議な作品は見る者の心の奥底に触れてきます。

 もしかしたら作田さんにとって作品を手がけることは「泣く」ことと似ているのかもしれません。どうしようもない悲しさや寂しさ、あるいは楽しさや喜び、そういったものと真正面から対峙したとき、人は自分を綺麗な形に取り繕い保つ余裕も暇も無くなります。泣く時に顔は歪み、涙は目を腫らします。それはある意味では醜さを伴う行動です。ですがその醜さの向こうにある心の奥底の中に「美」を見いだしたのが作田さんなのではないかと思うのです。

 人の心の奥底、そこには自分でも計り知れない感情の根源があるような気がします。普段社会を生きる上で人々は色々な役割を持ち、それはそのまま社会を生き抜く上での武器であり鎧となりますが、そういったものを全て貫いて心の奥底が顕になった時、人は涙を流すのではないでしょうか。

 心の奥底とは泣く所である、作田さんの作品を見ているとそんな気がするのです。

2021.6 飯田未来子

 
 
 
 
 
 

作田富幸 -Tomiyuki Sakuta-

 

【略歴】

1960  山形県生まれ

1984  東京造形大学美術学部版画専攻卒業

1990  日本版画協会会員

1993  文化庁芸術インターンシップ生

2006-07 文化庁海外留学制度1年派遣研修員(オランダ)

2009- 12     東京芸術大学非常勤講師 

 

【個展】

2014,17 不忍画廊(東京)

       BWAギャラリー(カトワイズ、ポーランド)

2015    Bunkamuraギャラリー(東京) 

2017   ダビドソン ギャラリー(シアトル、アメリカ)

        アトリエ サーキュレイアー(モントリオール、カナダ)

2018   エカテリンブルグ美術館(ロシア) 

 

【受賞】

2005  第6回高知国際版画トリエンナーレ(大賞)

2008  第5回BIMPE V, 国際ミニプリントビエンナーレ  (バンクーバー、カナダ)、グランプリ受賞

2011  第20回ユーモアと風刺国際美術ビエンナーレ(ブルガリア)    素描と版画部門 1席受賞

2012  第3回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ(タイ) 買い上げ賞

         第15回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ  台湾)佳作賞      

           第7回BIMPE国際ミニプリントビエンナーレ   (カナダ)   グランプリ受賞

2013  CARMEN AROZENA(マドリッド、スペイン) グランプリ受賞

         第17回バルナ国際版画ビエンナーレ  (バルナ、ブルガリア)  1stPrize

2014  第16回中華民国国際版画・素描ビエンナーレ(台湾)銀賞      

2015  第4回バンコク国際版画・素描トリエンナーレ (タイ) 買い上げ賞

         第5回グアンラン国際版画ビエンナーレ  (中国)受賞

             マカオ 国際版画トリエンナーレ(マカオ)、佳作賞

                ビトラ国際版画トリエンナーレ(マケドニア)、 グランプリ受賞

2016  ROC国際版画ビエンナーレ(台湾)、佳作賞

 

【作品収蔵】

黒部市美術館、ロサンゼルス カウンティ美術館(アメリカ)、ユーモアと風刺の美術館(ブルガリア)、

The Museum of Contemporary Art(タイ)、国立台湾現代美術館(台湾)、Jordan Schnizer Museum of Art、

中国版画博物館、エカテリンブルグ美術館

 
 
 
 
 
 
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