高橋 亜弓 -Ayumi Takahashi-
 

​「おおきなくじら」/500×650mm

 

「これは何なのだろう…」

初めて高橋さんの作品を見たのはネット上の画像でしたが、あの独特の不思議な空気がスマートフォンの画面越しでも漂い迫ってくる、そんな印象があったことを覚えております。豊かな肉感を持つ不思議な存在が自由に浮遊するあの感覚、人ならざる形をとっているけれど、それでも尚「人」という生き物を強く感じさせるあの感覚、そしてその不思議な存在だけが居る部屋なのか広場なのか、これまた不思議な場所が無限に膨張してくるようなあの感覚、そんな様々な非日常の感覚があらゆる方角から刺激してくるような、あまり感じたことのない体験がそこにありました。

木版画をメインの作品制作技法にしながら、女体でもなく男体でもない狭間のものたちの姿を追い求めて表現を続けてきた高橋さん。その画面に現れる独特の質感には版木の自然な木目も生きており、偶発的に現れる要素も大切にしながら制作されている様が伺えます。

画面の中の世界は明らかに現実世界とは異なる時間が流れており、その空間は現実では許されないことも成り立たせます。質量や重力に基づく現実的法則は全て無視され(あるいは存在すらせず)、目に見えないものが見えて、見えるものが見えないような、まさに本当の意味での別次元です。しかしそんな別世界を見ているにも関わらず私はその画面に違和感を感じたことがありません。むしろすっと受け入れてしまえるほどの自然さがそこにはあります。下に載せた「大きな雲」という作品を見ても、人型の頭部は体から独立して浮かび、その体も我々が思う「人体」とはかけ離れた形をしています。それでも何故かだかその存在は当たり前の様に自然体で、その様子にグロテスクさは感じられず、むしろ神聖な雰囲気すらあります。現実世界の尺度で見れば確かにおかしな様かもしれません。しかし高橋さんの作品世界の次元で見ると、その存在や空間はちゃんとそれらが居る世界の秩序に基づいてそこに在る様に思います。だから見ていて不自然な感覚を覚えないのかもしれません。

高橋亜弓という一人の人間の中に存在する現実世界とは異なる宇宙。その世界を通して作品を作る作家の姿を思った時、それはまるで小さな世界を創造している様だと思いました。聖書には決して載っていない不思議な世界、高橋さんが手がけた作品を通してしか感じられない神話、ぜひお楽しみ下さい。

(2021年個展「片隅の神話」によせて)

 
 

高橋 亜弓 -Ayumi Takahashi-

多摩美術大学版画科卒業。

在学中より木版の油性凹版を用い、女性体でもなく、男性体でもない狭間のもの達のかたちを描く。

現在木版を中心にドローイングなど活動。

    

【略歴】

[2013年]

「FIELD OF NOW 2013」(銀座洋協ホール / 東京)

ワークショップ(gossip / 東京)

[2014年]

「Art Fair」(ベイルート)

[2015年]

「種々展」(円鳥洞画廊 / 東京)

「高橋亜弓×泉谷かおり」(gossip/東京)

[2016年]

「とこよ」新宿眼科画廊 個展

「INSIDES」 MDF GALLERY グループ展

[2017年]

「辺にて」新宿眼科画廊 個展

マイリトルポニーコラボ企画 「MY LITTLE PONY TOKYO ART GALLERY」 グループ展

アラブ首長国連邦 Art Hub にて1ヶ月の制作、展示 レジデンシー

[2018年]

「標本の庭」アートコンプレックスセンター 個展

「colors of spring」 Art Hub gallery (ドバイ)

abu dhabi アートフェア(アブダビ)

[2019年]

「ちいさい呼吸」アートコンプレックスセンター 個展

「透きとおる2」ワイアートギャラリー 個展

[2020年]

「透きとおる3」ワイアートギャラリー 個展

BS-TBS「むかしばなしの小部屋」アニメーション担当(語り:夏木マリ)

[2021年]

「片隅の神話」企画画廊くじらのほね 個展

 

他多数グループ展に参加。

 
© 企画画廊くじらのほね
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