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新倉 章子 -Akiko Niikura-
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​「枯野抄 二」/62×62cm

​ 花を始め、植物を題材として絵を描く人は昔から非常に多いです。咲き誇った花の愛らしさや豊かに伸びる茎や葉の瑞々しさには無条件に心惹かれるものがあり、絵にしてみたくなる気持ちもよくわかります。ですが絵の題材となる植物のほとんどはその花が一番輝いて咲いている頃か、植物が最盛期に向かう途中の状態(つぼみの姿など)であることが多く、その時期を過ぎたいわゆる「終わりかけの花」以降の状態を描ける人はそう多くないと思います。見る者に対して花の方からその美しさを投げかけてくるような艶やかなエネルギーに満ち溢れた時期と異なり、枯れゆく草花の美しさは外に放たれるようなものではなく、むしろその存在の内へ内へとどんどん秘められていくようなものだと感じます。そうやって奥まったところへと隠されゆく寡黙な美しさは、見る側にも相応の感性が無ければその価値を拾うどころか、存在そのものに気が付くことすら出来ないのかもしれません。
 兼ねてより新倉さんの絵にはそういう終わりに向かう植物は登場してきました。もちろん多くの人が好んで題材にするような豊かさに満ちた木々や草花の絵も多くありますが、いずれにもその先を予感させるような、静寂にも似た美しさが一貫して宿っているように思います。その絵はモチーフとなった草花の形を描いているというよりは、その姿を通して草花に降り積もり続ける「時間」を描いているかのようで、「何よりも植物が好き」と仰る新倉さんの眼差しだからこそ捉えることのできた美しさの形であり、二次元の画面に広げることができた奥行なのだろうと思います。
 今回お預かりした作品を見た時、何よりも強く感じたことは植物に対する「尊敬」でした。豊かに咲いた時期を超え、静かに終わりを迎えようとする枯れた草花の姿。それは力強く生きてきたからこそたどり着ける姿でもあるのでしょう。そこに行き着くまでに流れた時間も含めて、新倉さんの絵はまるで植物への賛歌そのもののように感じます。(2023年11月 飯田未来子)

 

新倉 章子 -Akiko Niikura-

1961年に東京に生まれる。 
早稲田大学大学院文学研究科(哲学)修士課程を修了した後、松林桂月の流れをくむ 水墨画家・故原寿美に師事し、書と水墨画を学ぶ。 

【活動経歴】 
2007-14年 NHK学園新宿オープンスクールで水墨画の講師を務める 
2018年   アートギャラリー閑々居にて初個展(新橋) 
2018年   日本水墨画大賞展に野地耕一郎氏の推薦により出品・準大賞受賞※ 
2019年   アートギャラリー閑々居常設展出品(新橋) 
2019年   日貿出版社『付け立てを極める』にて「新倉章子の墨表現」が掲載 
2020年   アートギャラリー閑々居にて個展(新橋) 
2021年   企画画廊くじらのほねにて個展(西千葉) 
2022年      アートギャラリー閑々居にて個展(新橋) 
2022年      企画画廊くじらのほねにて個展(西千葉

​2023年    企画画廊くじらのほねにて個展(西千葉

【その他】 
河出書房新社『皆川博子随筆精華 Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ』にて装丁画、挿画を担当
兎影館 皆川博子「X iang  Fei   香妃」 挿画担当

《日本水墨画大賞展 審査講評》※
松林桂月流の南画(文人画)の流れを継承しながら、宗達流や琳派画風や中国明時代 末期の徐渭、八大山人らの水墨表現に学んだハイブリッドな水墨画である。しかし、ただ新規に走らず、古様に親しい風格がとても魅力的な作家であり、作品である。  / 野地耕一郎(泉屋博古館東京 館長) 
松林桂月(まつばやしけけいげつ)=明治から昭和期の近代を代表する日本画家・水墨画家。 
徐渭(じょい)=中国明代の偉大な文人。書・画・詩・詞・戯曲・散文など多才で知られる。 
八大山人(はちだいさんじん)=中国明代末期から清代初期の画家・書家・詩人。

 

© 企画画廊くじらのほね
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