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田村 幸帆 -Sachiho Tamura-

「Same?」/ F15号(65.2×53cm)
ジョーン・オズボーンという歌手の楽曲に「One Of Us」というタイトルの歌があります。神様は偉大だと教えられてきたけれど、もし神様の姿が私たちと変わらなくて、バスに乗って家路についている見知らぬ人がそうだとしたらどうする?―端的に一部を和訳するとそんなことを歌っている曲なのですが、このフラットな世界観とそれによく合う優しくもどこか切ない曲調が好きで時々聴いております。今展のタイトルは直接的にその曲から借りたわけではないのですが、私の中で「One Of Us」という言葉感はこの曲のイメージが強く、その上で今回の個展作家である田村幸帆さんの作品を見た時に浮かんだ言葉なので、私の中で何かがリンクしたのだろうとは思っております。
初めて田村さんの作品を拝見したのはWeb上だったのでスマートフォン画面の中でのことだったのですが、何かひっかかるものがあり興味を持ったことを覚えています。よく登場する犬や猫は顔つきこそ大胆にデフォルメされていますが、体つきや仕草、佇まいなどの描写は妙なリアリティがあり、脱力した犬の姿勢にはちゃんと重みを感じるようです。そして一緒に描かれている決してメインではないカーペットやカーテンなどの柄の描写や色味の美しさにも目がいきました。ですが何よりも惹かれたのは、そうやって描かれたモチーフが一体となって画面の中に配置されたことで広がる田村さんの世界観です。メインとなるモチーフは確かに存在するのですが、ひとつの画面上に現れたあらゆる事物はどんなものでも全て過小にも過大にも評価されず、あくまでフラットに描かれている印象があります。そこには仰々しいテーマなどはなく、何気ない日常のワンシーンのようなカジュアルさがありますが、だからこそ尊い何かを見ているような心境にもなり得ます。
田村さんが描き出す世界の中にはとりたてて「特別なもの」が無いところが私は好きなのだと思います。何が特別かどうかはその人の主観によるものですが、描くことを通して何てことの無い生活や日常場面の美しさを教えてくれる田村さんの眼差しに、もしかしたらジョーン・オズボーンの歌詞が重なったのかもしれません。
(2023年1月 飯田未来子)

















田村 幸帆 -Sachiho Tamura-
1992 年 神奈川県生まれ
2020 年 東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画研究分野 修了
現在、創画会 会友
【経歴】
2018年 第27回臥龍桜日本画大賞展 入選
2018年 第45回創画展 初入選(以下第46回、第47回、第49回)
2019 年 守谷育英会美術奨励賞
第45回東京春季創画展 初入選 ( 以下第 46 回、47回、48回)
第43回三菱商事アート・ゲート・プログラム入選(以下第45回・第46回)
数寄和 ギャラリーへ行こう 2019 入選 (~’20・’21)
2020年 IAG AWARDS 2020 入選 ギャラリー上り屋敷賞 受賞
2021年 第1回 ARTIST NEW GATE 入選
2021年 第9回 美の起源展 入選
2022年 いい芽ふくら芽in TOKYO2022 入選
2021年 個展 “DEAR”(ギャラリー上り屋敷 東京)