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東影 美紀子 -Mikiko Higashikage-

「明日へ」/27×22cm
今展は東影さんの原点とも言える銅版画を軸とした展覧会となります。
銅版画と言えばエディションが存在し、同じ作品を複数作られる作家が多い中、東影さんはご自身が納得できる1枚を求めて何度も刷り、満足いく仕上がりの作品が出来上がったらそれで完成とするスタイルをとります。そしてその納得できる1枚が誕生するまでに生じた沢山の試し刷りや刷り損じは安易に捨てられることなく、東影さんのミクストメディア作品の中で切り貼りされ、また別の作品として生まれ変わります。このミクストメディア作品のシリーズを東影さんは「かけらあつめ」と呼んでいます。
版画というジャンルに対して多くの方が抱くイメージとして「複数同じ作品を作ることができる」という点です。確かにこの点は他のジャンルの作品ではなかなか出来ないことで目立った特徴かもしれません。ですが私にとって版画という技法はあくまで絵を描く手法のひとつであり、drawingやpaintingでは出すことのできない、printingだからこその味わいや雰囲気が何よりの特徴だと思います。立体物に刷ることが難しく、あくまで紙面上という二次元世界に限られた中での表現をとるこの技法は、もしかしたらどんな技法よりも「絵」という二次元世界を受け入れることで独自の強みを発展させてきた絵画技法なのではないでしょうか。そういった観点から考えると「複製ができる」という特徴は自由表現として版画を使う人たちにとっては重要ではなく「性質上単にそれを可能にしているだけ」という程度にすぎないかもしれません。
そういう意味で東影さんの「納得できる1点を求めて刷っていく」というスタイルは私にはとても純粋に銅版画の表現を追求しているように見えます。そして理想の1点が出来上がるまでに生じた試し刷りや刷り損じの版画たちはきっと東影さんの試行錯誤の足跡そのものであり、完成までに費やした時間の断片だと思うのです。それはまさに作品の「かけら」であり、そのかけらをあつめて新たに作られるミクストメディア作品を「かけらあつめ」と呼ぶのはこの上なくぴったりな名前だと感じます。
数点の銅版画作品とそこから生じたミクストメディア作品をメインに展示する今回の個展。それはまるでひとつの作品が出来上がるまでに費やされた時間や労力そして「美」への追求…そういった目に見えない価値をも織り込んで展示をするようです。そしてこんな風に生まれた沢山の煌めく作品を展覧会として一同に並べるとき、この「展覧会」そのものがまたひとつの大きな「かけらあつめ」の作品となるのかもしれません。
(2022年 東影美紀子個展「かけらあつめ」によせて)










東影 美紀子 -Mikiko Higashikage-
【経歴】
1974年生まれ 茨城県出身
2005年 武蔵野美術学園 メディア表現科 版画コース 研究課程 修了
2006年 「第10回 若き画家たちからのメッセージ展」(買上賞)すどう美術館
【個展】
2007年 「第10回 若き画家たちからのメッセージ受賞者展」 (個展)
/ すどう美術館 東京
2013年 「東影美紀子 銅版画展」 / あるぴーの 大宮高島屋 埼玉
「東影美紀子展」/ Gallery子の星 東京
2014年 「東影美紀子 ちいさな世界展」 / ギャラリー多羅葉 埼玉
「森のカケラ展」/ Gallery子の星 東京
2016年 「東影美紀子展 ふとした思い」 / ギャラリー島田 兵庫
「かけらあつめ」/ あるぴーの銀花ギャラリー 埼玉
2018年 「morinosu/東影美紀子展」/ Gallery子の星 東京
2019年 「東影美紀子展」/ Gallery子の星 東京
「鳥に花に・東影美紀子展」/ あるぴーの銀花ギャラリー 埼玉
2021年 「東影美紀子個展 カーテンコール」/ 企画画廊くじらのほね 千葉
「青木香織×東影美紀子×ひろせまな 三人展 それからね、」
/ 企画画廊くじらのほね 千葉
他多数グループ展に参加。