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小笠原 亮一 -Ryoichi Ogasawara-

「秋明菊」/ M10号(53×33.3cm)
小笠原さんの絵を初めて見たのは私たちが画廊を開くことを決めた後のことでした。都内の画廊で行われていたグループ展を拝見していたときに出会ったのですが、その時見たハルジオンの絵にとても惹かれてしまったのを覚えています。道端などでよく見かけるこの花と今までじっくりと向き合ったことはなかったのですが、小笠原さんの絵からはハルジオンの揺るぎない生命力を感じ、それでいて決して大袈裟な描写などではなく、本当に小笠原さんの見た等身大のハルジオンが絵という形を通してそこに在るかの様で、「ああハルジオンてこんなに気高い花だったんだ」とそのとき妙に納得したものです。
小笠原さんがモチーフにするのはハルジオンを始めとした草花に限らず、雀や金魚など身近な生き物も描かれますし、壮大な街並みを大きなスケール感をもって描くこともあります。一見すると様々なモチーフを描いているようにも見えますが、どんなモチーフでも必ず先に述べたような揺るぎない生命力を感じることができ、絵と対面した時に正面から風がぶわっと吹き渡っていくかのような迫力をしばしば覚えるものです。
「一見するとさまざまなモチーフ」と先に書きましたが、小笠原さんの描きたい物事は突き詰めていくと極めてシンプルで、「生きているもの」を描きたいのではないかと思います。空にむかって伸びるハルジオンも、花瓶にいけられたポピーも、地面をついばむ雀も、人々が生活を営むことで生きる街並みも、モチーフがどんな姿形になろうとも私はそこからやはり力強い生命をどうしても感じてしまいます。「生きている」ということはとても流動的な現象で、同じ様子の時間は二度と来ず一度きりの瞬間の連続です。そしていつ終わりがくるのかもわからない儚さもあります。次の瞬間には何者かに食べられてしまってなくなってしまうかもしれない、けれどもその瞬間まではしっかり息づき「今」を全うし続けて生きている…刻一刻と変化し続ける生命のカタチ、その絶え間ない変化の中で生命が最も美しく力強く輝く瞬間を小笠原さんは目で捉え、絵へと昇華しているのではないか、小笠原さんの絵と対峙して触れる生命の美しい描写を見ているとそう考えてしまいます。
力強く厳しくそれでいて優しく温かな油彩の表情とその上を勢いよく走る竹ペンの墨、そうして描かれた小笠原さんの絵はまるでそれ自体に血が通うかのようで、のびやかに呼吸をしているかのようです。足元を照らしてくれるような命の灯りが咲く作品たち、これを機会にぜひご覧いただければ幸いです。
2021.8 飯田未来子










小笠原 亮一 -Ryoichi Ogasawara-
岩手県釜石市に生まれる。
1971年 故、樋口加六先生に師事(独立美術会員)
造形展出品(造形画廊主催)
渡仏
1983年 外遊(スペイン・ポルトガル)
1985年 外遊(ニューヨーク)
1994年 「基の会」結成、代表
1995年 「基の会」第2回展(埼玉県立近代美術館)に於開催
銀座清月堂に於いて銀座展
銀座清月堂に於個展
2004年 実在派展招待出品(銀座展) 以後会員
実在派展招待出品(兵庫県あさご美術館展)
利根山光人記念大賞展出品
第2回「花を描く展」奨励賞受賞
2006年 第3回深沢紅子野の花美術館「花を描く展」野の花美術館賞受賞(最高賞)
2007年 上野の森大賞展入選
人間賛歌大賞展 奨励賞
2008年 全国公募IZUBI展入選
上野の森美術館大賞展(一次賞候補)
2009年 上野の森美術館大賞展(賞候補)
戸根山光人記念大賞展「祭り」トリエンナーレ北上にて奨励賞
2010年 上野の森美術館大賞展。
ビエンナーレうしく入選
美浜美術展。小磯良平大賞展
2011年 上野の森美術館大賞展(賞候補)
2012年 上野の森美術館大賞展
ビエンナーレうしく入選
2013年 第1回損保ジャパン美術賞展FACE 入選
上野の森美術館大賞展 入選
第3回青木繁記念大賞西日本美術展 入選
現在:基の会代表・実在派会員・日本美術家連盟会員